子ども達とレジリエンス(回復力・逆境力)

平成26年8月31日(日)に開催された「教育を考える市民の会」の第10回学習会

「児童への虐待を考える」
~あなたの救いをまっている~

のレポートの続きとなります。(児童虐待に関する前段はこちらからです)

虐待の問題だけではなく、常々考えている「遊び環境」の必要性を裏付けるお話が多かったので、別項として私感を交えて記載します。


[講演資料から]

《遊び塾の先生の話》

・児童自立支援施設で入所している児童を見て、苦しさを明るい方向に切り替える能力が必要であると感じた。
・そのためには、幼児期に楽しいことをいっぱい経験すること、辛いことを乗り越える経験をすること、こうした経験を通して自分に対する自信がつき、いろいろな事態に対応できる引き出しが増え、苦しい状況にあっても心を切り替えて頑張る事ができるようになる。

 

《幼児教育の無償化の論点》

(平成21年3月30日 文部科学省 幼児教育課)

①幼児教育については、

a)生涯にわたる人格形成及び義務教育の基礎を培う重要なものであることが法律上も明確化され、質の高い幼児教育を全ての国民が享受出来る環境づくりの必要性が高まっている。

b)幼児教育の効果は、犯罪の減少や所得の増大につながるなど、社会経済全体に及ぶ。

c)少子化対策の観点からも、子育て家庭の負担軽減は喫緊の課題である。

d)諸外国においても、幼児教育の重要性を踏まえ、無償化の取組みが進んでいる。

上記のことから、幼児教育を無償化し、全ての国民に幼児教育にアクセスする機会を実質的に保証する必要があるのではないか。


《(注1)資料より》

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*抜粋

乳幼児期に感覚、知覚、認知。行動、睡眠リズム等が「学習」されること、この学習は感受性期(臨界期)と呼ばれる生後発達の一定の時期に生じることがあきらかになっている。これらの知見は乳幼児期の教育の重要性を示している。

子どもの心の問題については、特に乳幼児・学童期の経験が重要であること、そして、学校教育について見るならば、特に小学校までの教育が非常に重要であることを示している。

前頭連合野の感受性期(臨界期)は、シナプス増減の推移から推論すると8歳ぐらいがピークで20歳くらいまで続くと想定される。この時期に、社会関係をきちんと教育・学習することが大切であり、今後は、そのあり方について、学校現場等と連携しながら、さらに研究を進めることが必要である。


◇レジリエンス(回復力・逆境力)という言葉がある。

・虐待を受けた児童すべてが回復しないでダメになるわけではない。

・厳しい状況にあっても、ネガティブな面だけでなくポジティブな面を見出すことが出来、自分のいる状況に対して前向きに、しなやかに逆境を乗り越え成長していく児童もいる。

・こうした心の持ち方、心の力をレジリエンスと言う。

 

◇レジリエンスを構成する要素

●感情のコントロール~ネガティブな感情の解消(音楽、運動、呼吸法、作文等)

●楽観性~楽観的な思考(過去の体験がもたらしたネガティブな認知、思考の修正)

●自己効力感~自分に対する有能感、信頼感(成功体験の積み重ね)

●自尊感情~自分に対するポジティブな感情(自分についての内外の評価)

●人間関係~自分を支えてくれるサポーター(応援団の形成)

 

これらは児童虐待がベースにある中で説明がされているが、実際には現代を生きる多くの子ども達にも欠如しがちな要素であり、(注1)の資料においても、感受性期において、どれだけレジリエンスという能力を身につけさせることができるかが私達大人が大事にすべきことだと思います。

それは、「幼稚園で英語を教えてほしい。」という現状のニーズが正しいかどうかを考えるきっかけになるものであり、いかに幼少期に「活きた経験」を五感を使って養っていけるかが本当に必要とされることではないかと感じています。(札幌トモエ幼稚園の項をご参照ください。)

これらは幼児期への投資による教育的な効果があるという裏付けであると共に、家庭で虐待されていても、学校、地域でケアされていれば、子どもは健全に育つ可能性がある。

家庭に変わってこの様な役割を担う”場所”ができれば、現在懸念されている虐待の増加(前項:悪循環のサイクル)も減少させることができるかもしれない。

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今、多くの人が感じているが如く、世の中がおかしい。

その悪循環として、子ども達が受動的娯楽や受け身の時間に浸かってしまいがちな事により、失敗、成功体験の不足、自己肯定感の欠如が顕著化しているのではないか?それは世代交代でさらなる虐待や自己肯定感不足を誘発するのではないだろうか?

次世代につなげるアクションとして、今の子ども達を人間性豊かに育てる環境づくりが急務。
(6月の一般質問の内容や、遊びやスポーツを通した子ども達の居場所等々)

その思いを更に強くした契機となりました。

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これらの解消に向けた議論の中に、放課後対策というのが掲げれらていました。

参考までに以下に講演資料を抜粋すると。

《現状分析》

・就労する保護者の学童を保有する場所が少ない。

・経済格差が学童のいろいろな教育や体験の受ける機会の格差につながっている。

・障がい児の活動の場、健常児との交流の場が少ない。

・児童虐待対応件数が増加している一方、放課後こうした学童をサポートする体制が弱い。

 

《諸外国における放課後対策》

・諸外国では、教育を社会保証、社会福祉の中核に位置づけるという動きが強まっていて、従来福祉の範疇にあった放課後対策を含む形で教育のあり方が議論されるようになっている。

・具体的には、放課後対策と学校教育が「教育福祉」を担う制度としてトータルに考えられ、それぞれが役割分担(学校は学業、放課後対策は学業を除く様々な活動等)することで、全体として教育(人づくり)の充実を図るというものである。

 

《新しい放課後対策》

・保護者が就労する児童のための安全な活動の場所の確保(就労していない保護者の児童へも対応)

・様々な活動による人間形成、学力向上などの人づくり

・社会から取り残される児童をなくすための社会的統合の促進

・保護者への支援(子育て相談、就労支援、医療保険等のサービス紹介等)

 

《児童のレジリエンスの向上》

・イギリスでは、放課後活動が自己肯定感、自信、チャレンジ精神、チームワーク、学習意欲、学力の向上に効果があったとされ、アメリカでも学力や学習意欲、感情コントロール、対人間関係の向上に効果があったと報告されている。

・学校で知り合った大人は、地域における児童のサポーターになることが期待される。

・これらは、児童のレジリエンスの向上に繋がるものと考える。

 

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全てではなく抜粋でありますが、今回の講師の岩見沢児童相談所、堤茂樹所長様の素晴らしい資料を参考にさせていただきました。自分へのメモとしてだけでは勿体ないため、このように公開をさせていただきます。

私自身、あらゆる子ども達の遊び場(居場所)や熱中力等々、これからの難しい時代を切り拓いていく子ども達が本当に身につけていかなくてはならないことがどんなものか、それに対し、社会・大人はどういう方向を向いて行くべきかなど、まだまだ簡潔な言葉にできませんが、そろそろ一つの投稿としてまとめていけたらと思っています。 

それらの裏付けの一つとして、今回の勉強会は大いに参考になりました。

心から感謝申し上げます。

「子ども達とレジリエンス(回復力・逆境力)」への2件のフィードバック

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