〈平成30年10月2日投稿〉
そのものズバリ「すぐに役に立つものはすぐに役に立たなくなる」という言葉で検索してみると、沢山興味深い投稿が出てきますが、中でも池上彰さんの講演録が面白かった。
少し大雑把にその内容をまとめてみると。
アメリカの大学では「社会に出てすぐに役立つ学問は教えない」etc.・・
要するに、最先端技術はすぐに陳腐化する。どんどん科学が進んでいっても常についていける。あるいは更に新しい知識を身につけ、自らいろんなことを開発していく。そういう力をつけることこそが大学に必要なこと。すなわち、すぐに役に立つことは、すぐ役に立たなくなるから教えない。
この「すぐに役に立つものは、すぐ役に立たなくなる」というのは、かつての慶応義塾大学の塾長であった小泉信三の言葉でもあり、「すぐ役に立たないようなことを教えれば、生涯ずっと役に立つ」という考え方が、今のリベラルアーツという考え方になってきている。
という様な内容。
ここでリベラルアーツというキーワードも出てきて、自分が議員になりたての頃に出会ったことを思い出します。
その当時の拙ブログを一部抜粋すると、
〈明治前〉は儒教、和歌、中国でいう科挙・四書五経等々があり、それは一言で言うと”すぐには役に立たないもの”である。という捉え方に触れつつ・・。〈明治後〉は「教養=実学」という概念が出現し、それは「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。で有名な福沢諭吉の”学問のすすめ”にもあるとおり、今の日本の繁栄をつくった基礎であるはず。
いずれにせよ「教養」という概念が、明治前の”すぐには役に立たないもの”というものから”すぐに役立つ”に変化してきたのが現在の日本の状況を生み出しているとも言えるのではないだろうか。という切り口の中で、ではその”すぐには役にたたない”教養をどうやって身につけていくべきか・・
https://hiranoyoshifumi.jp/2012/12/28/893
結局、ここで何を言いたいかというと、、実は今朝の北海道新聞朝刊に掲載されていた「炭鉄港」と関連したドイツのルール地方における産業遺産群の先進的活用に関する5回連載開始の記事をみて感じたことでした。(下画像は著作権の関係で暈しをいれさせていただいております)
この産業遺産に関しては、空知においても「負の遺産(実際には世界遺産「明治日本の産業革命遺産」とも密接に関連する高い価値を有しており、産業遺産としての現存物も数多く貴重。)」と言われがちです。
しかし今、この産業遺産群が日本の近代化を推し進めた立役者として再評価されつつあり、空知の石炭のみならず、それを運び出した小樽や室蘭の港、空知の石炭と密接な関係がある室蘭の製鉄。それらを結んだ鉄道。この関連するストーリーを「炭鉄港」という言葉でクローズアップしていこうというもの。
これらはまさしく、「今すぐには役に立たないもの」という括りになってしまうと思われますが、今、すぐに役に立つものばかりを追い求め、次世代に本当に大事なモノゴトを育み繋げるという意志が希薄な現在において、今一度、足元を固め直すチャンスの様な気がします。
政治も常に「すぐに役にたつもの」を期待される結果、目先の意向に絆され「すぐに役にたたないもの」は二の次にしてしまう状況を自分も含めて反省しなければならないと思うのです(当然、”今”はとても大事で蔑ろにしてはならないものです。だからこそ、その”今”と”未来”を繋げて考えていくことが重要なのだと思っています)。
よって今、私達の地域がより明るい未来となるためには、地域アイデンティティの創出と醸成が不可欠であり、自分たちのまちに誇りと愛着を抱くには、やはりその価値を知ることが始まりになるのだと認識をしています。
よって先だっての平成30年第三回定例会の一般質問では、この「炭鉄港」に対する岩見沢市の意志について確認をさせていただきました。
下に配信動画のリンクを張ります。
■読み原稿
https://hiranoyoshifumi.jp/2018/09/10/10186
今の私達は目先の「利便性」や「即戦力」等の言葉に感化され、気がつけば大事なことから目を背けてしまっている様な気がしてなりません。
企業における人材は、一般的には即戦力は滅多に存在せず、よって育成しなければ育ちません。地域の価値も同様に、時間をかけて磨いて育てていかなくては永遠に花開くことはないのでしょう。
私達は「そんなもので飯が食えるか?」的な視点が行き過ぎ、すぐに役に立ちすぎることは求めてはいないだろうか。
「リベラルアーツ」、「教養」、今すぐには役に立たないものの重要性に気づくこと。
人も地域も同じではないでしょうか。
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