民生常任委員会他都市調査【②北播磨総合医療センターへの視察】

〈令和8年10月29日(木)投稿〉

岩見沢市では令和10年秋の開院に向け、新病院の建設が進行しています。

今年の4月には先行して経営統合が行われ、それまで北海道中央労災病院に在席していた医療従事者の方も岩見沢市立総合病院にて勤務をされています。

そのような中、現在、全国の公立病院が厳しい経営環境に直面し、医師や看護師の確保、人口減少による医療需要の変化、人件費や医療材料費の高騰など、従来の経営努力だけでは対応が難しい状況が続いています。

こうした状況下、今回視察を受け入れていただいた兵庫県の北播磨総合医療センターは、非常に示唆に富む事例でした。

同センターは、三木市と小野市がそれぞれ運営していた市民病院を統合し、2013年10月に開院した病院であり、実は私は令和2年にも会派で一度お伺いをしています。

その時は統合に向けた視点での視察でしたが、今回は統合後の課題を含めた視点での視察となります。


この北播磨総合医療センターは、医師不足などを背景に、自治体の枠を超えて医療資源を集約するという、全国でも先駆的な取り組みでした。

統合から13年が経過し、医師の確保や高度医療の提供、地域の医療機関との役割分担など、驚くような成果を上げています。

しかし、その一方で、患者数を確保し、病床運用を効率化し、診療収入を増やしているにもかかわらず、多額の赤字が続いているという現実があります。

先進的で合理的な病院経営で叶った医療提供体制としての成功が、必ずしも病院経営の安定につながらない。

今回の視察では、そんな日本の地域医療が抱える構造的な課題を考えさせられました。

1.医師不足を乗り越えた2つの病院の統合

北播磨総合医療センターの前身は、三木市立三木市民病院と小野市立小野市民病院です。

2004年に始まった新医師臨床研修制度などを背景に、大学病院から地域の病院への医師派遣が難しくなり、両病院は医師不足や経営悪化に直面していました。

こうした状況下、2007年11月に神戸大学から両市の病院統合が提案されました。医療資源を集約し、大学と連携しながら地域の中核病院をつくるという構想です。

2008年10月に両市が統合に合意し、2010年1月に一部事務組合である北播磨総合医療センター企業団を設立。そして2013年10月1日、現在の病院が開院しました。

同センターが掲げた基本理念は「患者と医療人を魅きつけるマグネットホスピタル」であり、単に2つの病院を1つにするのではなく、患者にも医療従事者にも選ばれる病院を目指しました。

その成果は数字にも表れています。

開院当初86人だった医師数は、2026年4月時点で180人に増加。研修医の受け入れも充実し、初期臨床研修医の定員13人については、毎年のマッチングで定員を満たす実績を続けています。

職員数も開院当初の約560人から、現在では1,000人を超える規模となっています。かつて医師不足に苦しんでいた地域が、統合によって若き有望な医師を育てる拠点へと変わったと言えます。

これは病院統合がもたらした大きな成果の一つと言えると思います。

2.病床を減らして医療機能を維持する

現在の北播磨総合医療センターは、34診療科、許可病床450床を擁し、手術室9室、手術支援ロボット、MRIやCTなどの高度医療機器を備え、北播磨地域の高度急性期・急性期医療を担う中核病院です。

しかし一時期、新型コロナウイルス感染症への対応などを背景に、看護師の離職が増加し、2023年3月には2病棟を休止することになりました。

医療従者の不足により、約100病床が利用できなくなるという、病院運営にとって非常に厳しい状況に陥ります。

ところが、同センターでは、病床が減少する中でも新規入院患者の受け入れや手術件数を大きく落とさないよう、さまざまな工夫を重ねてきました。

その中心となったのが、在院日数の短縮と地域の医療機関との連携強化でした。

例えば、平均在院日数は2014年度の13.6日から、2025年度には10.0日へ短縮しています。

また、2025年度の年間手術件数は5,608件、新入院患者数は12,160人となっています。

病床稼働率も、実際に運用している病床を基準にすると2025年度は91.2%と、高い水準を維持しています。

つまり、限られた病床を効率的に活用し、多くの患者を受け入れる取り組みを進めてきたと言えます。

この実現には、高度な治療や手術を担う病院と、その後の回復期医療、リハビリテーション、在宅医療などを担う医療機関との連携が不可欠であり、同センターでは、紹介率が80%前後、逆紹介率も120%を超える水準となっています。

専門的な治療が必要な患者を地域から受け入れ、病状が安定した患者はかかりつけ医などへ戻していく。こうした役割分担によって、地域全体で患者を支える仕組みが構築されつつあり、まさに国が進めてきた「地域医療構想」にも見事に通じる取り組みと言えます。

3.医療機能を充実させても赤字が続く

ここで、今回の視察において最も考えさせられた問題があります。

それは、医療機能を充実させ、患者の受け入れを増やし、運営を効率化しているにもかかわらず、病院経営は厳しさを増しているということです。

同センターの純損益を見ると、

  • 2023年度(令和5年度):約5億6,800万円の赤字
  • 2024年度(令和6年度):約9億400万円の赤字
  • 2025年度(令和7年度):約7億7,400万円の赤字

となっています。

2025年度には赤字幅がやや縮小したものの、依然として大きな純損失を計上しています。

一方、入院・外来を合わせた診療収入は、2018年度の約145億6,000万円から2025年度には約173億円へと増加しています。つまり、患者の受け入れや診療収入を増やす努力が、経営の黒字化につながっていないのです。

なぜ、このようなことが起きるのか?

同センターが2026年3月に公表した経営分析によると、2018年度から2024年度までの比較で、診療収入から薬価や診療材料に相当する部分を除いた収入の増加は、約4億9,000万円でした。

これに対し、職員給与費や委託料などの固定費は、約19億8,000万円増加しています。

内訳を見ると、職員給与費が約12億円、委託料が約3億9,000万円増加したほか、光熱水費や設備維持管理費なども上昇しており、病院側の分析でも、こうした固定費の増加が経営悪化の主要因であると整理されています。

そもそも病院においては、医療サービスの価格となる診療報酬は国が定めているため、一般的な企業のように物価や人件費の上昇分を自由に価格へ転嫁することができません。

2026年度の診療報酬改定はプラス改定となりましたが、同センターでは、人件費などの高騰分を十分に補う水準には至っていないということになります。加えて、高度急性期医療や救急医療を維持するためには、一定数の医師・看護師を確保し、高額な設備を維持する必要があります。

患者の受け入れ状況によって簡単に人員や設備を減らすこともできません。

病院からは、国の進める地域医療構想に沿って、病床の効率的な活用や地域連携を進めてきたにもかかわらず、赤字が続いていることへの難しい現実が示されました。

もちろん、効率化そのものが赤字を生み出しているわけではありません。

ただ、現場が医療提供体制を改善しても、増加する費用を診療収入で十分に賄えないという構造があるのです。

これは、同センターだけの問題ではなく、日本中の公立病院が抱えている課題であるとも言えます。

4.病院を支える自治体間の費用負担という課題

もう一つ、私が関心をもったのが、自治体間の費用負担の問題でした。

北播磨総合医療センターは、三木市と小野市が設置した一部事務組合である企業団によって運営されています。

企業長と副企業長には両市の市長が就き、企業団議会には両市議会からそれぞれ5人、合計10人の議員が選出されています。

両市が直接経営に参画できることは、企業団方式の利点ですが、その一方で、両市の考え方が一致しない場合には、重要な経営判断に時間がかかるという課題もあるとの説明を受けました。

また、企業団規約では、建設・開設に係る費用負担は両市で折半、開院後の運営に係る負担金は三木市が6割、小野市が4割と定められています。

しかし、実際に同センターを利用する患者は、両市の住民だけではなく、加東市、加西市、西脇市、多可町など、北播磨地域全体から多くの患者が訪れています。

視察時の説明でも、三木市と小野市以外の住民が患者の相当部分を占めていることが紹介されました。高度急性期医療を担う中核病院は、設置自治体の住民だけでなく、より広い地域の医療を支えています。これは岩見沢市立総合病院が南空知全域を担うことと同様です。

その一方で、企業団に対する自治体負担金は、基本的に三木市と小野市の2市のみが負担しています。(岩見沢市の場合も自治体としては一市だけの負担となります。)

2025年度には、三木市、小野市からの負担金が合計20億2,000万円に増額されました。

これは、単純に赤字を全額補填するというものではなく、公立病院が担う政策医療などに必要な経費を自治体が負担する仕組みに基づくものです。とはいえ、医療の恩恵を受ける地域と、病院の経営を支える自治体の範囲が必ずしも一致していないことは、今後の広域医療を考えるうえで非常に重要な課題だと感じています。

なお、2026年2月には、北播磨総合医療センターと、新たに市立加西病院との連携を進めるため、「一般社団法人きたはりまメディカルネットワーク」が設立されています。

医療機関の役割分担、人材交流、高額医療機器の重複投資の抑制などを目指す取り組みですが、関係自治体間の費用負担や具体的な連携の進め方については、引き続き調整が必要な状況にあるとのことでした。

常々感じていますが、誰が地域の中核病院を支えるのかという視点において、今後ますます自治体の境界を超えた議論が必要になってくるのではないかと思っています。

5.看護師の確保と患者に配慮した病院づくり

厳しい経営環境にありながらも、同センターでは医療従事者の確保や患者サービスの改善に向けた取り組みが続けられています。とりわけ大きな課題となったのが、コロナ禍における看護師の離職でした。

視察では、一時期17%程度まで上昇した看護師の離職率が、近年は7%を下回る水準に改善しているとの説明がありました。看護学校への積極的な訪問や教育体制の見直しなど、地道な取り組みを積み重ねてきたそうです。

その結果、看護師数も回復し、2026年秋には休止していた病棟を再開したとのことでした。

病院運営において、人材の確保がいかに重要かがわかります。また、院内も患者に配慮した施設設計です。4人部屋でも、仕切りや収納家具の配置によって個々のプライバシーに配慮した、半個室に近い空間がつくられていました。

外来についても、呼び出し機の活用や受付・会計システムの見直しにより、患者の待ち時間を減らす工夫が行われています。視察時の説明では、早い時間から来院する患者も多く、患者が実際に感じる待ち時間とは必ずしも一致しないとしながらも、予約時刻から実際の診察開始までの遅れは平均約8分とのことでした。

こうした課題を認識しながら、日々運用を改善している点も印象に残った次第です。

6.病院統合はゴールではなく、次の課題への出発点

北播磨総合医療センターの13年間の歩みを見ると、病院統合の意義は非常に大きかったと感じます。

医師不足によって経営継続が難しくなっていた2つの病院が、医療資源を集約することで、高度急性期医療を担う地域の中核病院へと生まれ変わりました。

私自身、以前、視察にお伺いしたときよりも、さらに医師や看護師が集まり、若手医師の育成機能も強化され、地域全体で医療を支える体制が進んでいると感じます。

これは間違いなく大きな成果です。

しかし病院を統合し、様々に進化すれば経営問題も解決するわけではないこともわかります。

医療の高度化が進めば専門職や設備への投資が必要となり、人口減少が進めば地域全体の医療需要も変化し、さらに、給与費や委託費などの固定費が上昇する中では、診療収入を増やす努力だけで経営を安定させることにも限界があります。

そして、広域的な医療提供体制を構築するのであれば、それを支える自治体間の費用負担についての議論が今後は必要となってくると思います。

今回の視察で強く感じたのは、病院の経営効率と、地域全体で必要な医療を維持することは、必ずしも同じ尺度では評価できないということでした。

不採算であっても地域に必要な医療は間違いなく存在します。もちろん、以前ブログにも投稿したように、病院の収支以外のメリットが存在すると確信しています。一方で、限られた財源の中で、すべての医療機能を従来どおり維持していくことも難かしい現実がありますす。

だからこそ、個々の病院の収支だけではなく、地域全体としてどのような医療機能が必要で、どこがその役割を担い、誰が支えていくのかを考える必要があるのでしょう。

今後の岩見沢市の医療提供体制を考えるうえでも、北播磨総合医療センターの経験から学ぶことは多いと感じました。医療機能の集約は必要な改革ですが、それだけで将来の持続可能性が保証されるわけではないということ。統合後も、医療需要の変化に合わせて機能を見直し、周辺の医療機関との連携を深め、経営のあり方を継続的に検証していくことが重要であることを強く認識した次第です。

これらは、「地域に必要な医療を、将来にわたってどう維持していくのか」という視点が不可欠です。

当たり前のことではありますが、病院統合の成否は、開院した時点ではなく、その後も持続可能な医療提供体制を築いていけるかどうかにかかっていると認識を深めました。

現在も岩見沢新病院の建設は進んでいます。

物価高騰の影響がどうなるか、今年の経営統合の結果はどうなるか?新病院が開業してからはどのように推移していくのか。様々に心配も募りますが、岩見沢市内に高度な二次医療を受けられる病院があるのは、未来の岩見沢にとって重要なことと信じ、今後も諸課題を注視していきたいと思っています。

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