〈令和8年10月28日投稿〉
この度、10月26日(月)~28日(水)の2泊3日にて、民生常任委員会の他都市調査に伺ってきました。

ひとつめは釧路市です。
ご承知のとおり、釧路市は太陽光発電に関する条例で国内先進地となっています。
太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーは、脱炭素社会の実現に向けた重要な取り組みですが、一方で、地域との調整が不十分なまま設置されたり、雪害などで破損した施設が適切に管理されなかったりすると、生活環境や自然環境に大きな影響を及ぼします。さらに、事業終了後に施設が撤去されず、その費用負担が地域に残される懸念もあります。
そのため、私は2019年(令和元年)から、岩見沢市議会において太陽光発電施設の設置、維持管理、撤去・廃棄をめぐる課題を取り上げてきました。
その流れの中で、民生常任委員会の重点調査項目のひとつとして、この度の行政視察で、全国的にも先進的な制度を導入した釧路市を訪問させていただくこととなりました。
特に注目したのは、将来の撤去費用をあらかじめ確保する「保証金の事前預入」と「市による質権設定」です。
今回は、これまでの岩見沢市での経過と、釧路市の制度から何を取り入れるべきかを整理したいと思います。
2019年から取り上げてきた岩見沢市の課題
私が太陽光発電施設の将来的な放置リスクを初めて議会で取り上げたのは、2019年10月の決算審査特別委員会でした。耐用年数を迎えた設備が適切に撤去・処理されず、地域に残されることがないよう、市として未然防止策を考える必要があるとの考えからでした。
そしてその後も、次のような課題を継続して取り上げています。
2021年3月 予算審査特別委員会
住宅街の空き地などに設置された太陽光発電施設による住環境への影響を指摘し、道内自治体の動向も踏まえ、岩見沢市独自のガイドラインや条例を検討する必要性を訴えました。
2023年3月・12月 代表質問・一般質問
豪雪地帯である岩見沢では、積雪荷重だけでなく、融雪時の雪の沈降によって架台やパネルが引っ張られ、落下・破損する事例が見られます。破損した設備による感電や火災、含有物質の流出などのリスクを指摘し、積雪荷重や設置高さなど、多雪地域に適した基準の徹底を求めました。
2025年6月 一般質問
美流渡地区などで確認された太陽光パネルの破損・脱落を取り上げ、現地確認や事業者への指導状況を質問しました。答弁では、岩見沢市が令和6年度に、屋根設置型を除く市内119基の太陽光発電設備を目視調査していたことが明らかになりました。また、これまで美流渡地区の物件等について、事業者へ是正を求めてきたことも確認できました。
その後
長年状況を確認してきた美流渡地区の施設では、市の指導と事業者の判断により、破損した設備の解体・撤去が進みました。
さらに本年度、市議会民生常任委員会の重点調査項目として、太陽光発電施設に関する懸念の解消を提案し、採択されました。今回の釧路市視察は、その調査の一環です。
釧路市が導入した許可制度
釧路市では、2025年10月に「釧路市自然と太陽光発電施設の調和に関する条例」を施行しました。
これにより、2026年1月以降に着手する、出力10kW以上の地上設置型太陽光発電施設は、原則として市長の許可が必要となりました。
釧路市が条例を制定した大きな背景には、釧路湿原周辺をはじめとする豊かな自然環境と、タンチョウ、オジロワシ、チュウヒ、オオジシギ、キタサンショウウオの5種を保全する目的が主となります。

条例では市内全域を許可制とし、特に保全が必要な区域では、専門家の意見を踏まえた生息調査と保全計画を求めます。鳥類4種の調査は、事業区域とその周辺3kmを対象に、原則として2シーズン、2か年にわたって実施する仕組みです。
岩見沢市では雪害や住宅地との近接が課題の出発点となっていますが、「地域特有の環境を守り、不適切な事業を入口で防ぐ」という考え方は共通していると思います。
注目に値する「保証金の事前預入」
釧路市は条例をさらに改正し、2026年12月23日以後の許可申請から、FIT制度による国の解体等積立金の対象とならない事業について、撤去・廃棄費用を保証金として事前に確保する制度を導入しすることとなります。
保証金は金融機関に預け入れ、その預金債権について、市と質権設定契約を結ばなければ設置許可を受けられない仕組みです。
保証金額は、次の二つを比較して高い方とされます。
・発電出力1kW当たり1万円を乗じた額
・工事費総額の5%に相当する額、または撤去・廃棄費用の見積額
従来のように「将来に向けて積み立てます」という計画だけでは、途中で事業者が倒産したり、事業から撤退したりした場合、必要な資金が残らない可能性があることから、釧路市の制度は、事業を始める前に現金を確保し、その預金を事業者だけの判断では動かせないよう、市が質権を設定するもので、リスクを避ける観点から非常に効果的であり、事業者が撤去命令などに従わず、市が行政代執行によって施設を撤去することになった場合には、この保証金を撤去費用に充てることになります。
また、事業が譲渡された場合も、承継した事業者が新たに保証金を預け入れ、市と質権設定契約を結ぶまでは、前事業者との契約を解除しない仕組みです。発電事業の転売によって、撤去責任や費用の担保が途切れることを防いでいます。
これらの仕組みは岩見沢においても、雪害等で太陽光発電施設が破損し、責任の所在が曖昧になる可能性等を含め、多様なリスクを低減することが可能になります。
住民説明にも実効性を持たせる
釧路市の条例では、発電出力に応じ、事業区域の境界から100m、300m、最大1km以内の住民や土地所有者などを説明対象としています。
説明会は開催日の14日前までに周知し、終了後も14日以上、書面による質問や意見を受け付け、事業者が書面で回答しなければなりません。
さらに説明会は、録音と録画を同時に行い、施設を廃止するまで保存することが義務付けられています。
太陽光発電施設をめぐるトラブルには、地域への説明不足や、後になってから「言った、言わない」という行き違いが生じる例もあります。説明の範囲、質問期間、記録の保存まで具体的に定めた点は、岩見沢市にとっても参考になるものです。
ただし、この制度ですべてが解決するわけではありません。
釧路市の制度は大きく前進した内容ではありますが、限界も正しく理解する必要があります。
第一に、新たな保証金制度は2026年12月23日以後に許可申請を行う事業が対象であり、すでに設置されている施設へ遡って適用されるものではありません。
第二に、保証金があるからといって、市が直ちに施設を撤去できるわけではありません。命令や行政代執行など、法令に基づく手続きを経る必要があります。
第三に、保証金額は許可申請時の出力、工事費、見積額などを基に決まります。物価に自動連動する制度ではないため、20年、30年後に撤去費用が大幅に上昇すれば、保証金だけでは不足する可能性があります。
また、岩見沢市が抱える積雪荷重、融雪沈下、住宅地との距離、破損時の巡回・応急措置などの課題は、釧路市の制度をそのまま導入するだけでは解決できません。
したがって、釧路市の条例を単純に写すのではなく、その考え方を学び、岩見沢市の地域特性に合わせて制度を組み立てることが重要であると認識しています。
あくまで私案ではありますが、今回の視察を踏まえた上、岩見沢市で検討すべきこととして、次の点を検討する必要があると感じています。
■一定規模以上の地上設置型太陽光発電施設を対象とする許可制
■事業開始前の撤去・廃棄費用の確保
■事業譲渡後も責任と資金担保が途切れない仕組み
■住民説明会の範囲、質問期間、記録保存の明確化
■積雪荷重、融雪沈下を考慮した多雪地域向けの構造及び設置基準
■事故や破損が発生した場合の報告、点検、応急措置の仕組み
■既存施設についても、所有者や管理状況を継続的に把握する仕組み
■etc.
技術基準や許可条件については、再エネ特措法や電気事業法などとの整合性を十分に確認しなければなりません。そのうえで、自治体としてどこまで実効性あるルールを設けられるのか、具体的な検討を進める必要があると考えています。
脱炭素と地域の安心を両立させるために
私は、太陽光発電そのものを否定しているわけではありません。
再生可能エネルギーを地域で活用していくためにも、設置から維持管理、事業終了後の撤去まで、事業者が責任を持つ仕組みが必要です。それがなければ、地域住民の理解を得ることも、持続可能な再生可能エネルギー政策を進めることも難しくなると感じています。
以前から取り上げてきた課題は、美流渡地区での設備撤去という一つの進展を見せました。しかし、既存施設の管理や将来の放置をどう防ぐかという根本的な課題は残っています。
今回の釧路市視察で得た知見を、視察報告だけで終わらせることなく、岩見沢市の実効性あるルールづくりにつなげていけたらと考えています。
市民の安心と、再生可能エネルギーの健全な普及。
この両立を目指し、引き続き取り組んでいきたいと思います。