〈平成30年8月7日投稿〉
少し前に岩見沢プレーパーク研究会のお母さんのフェイスブックで教えていただいた研究会です。
以前から園庭の様子を見聞きしていて、とても気になっていたものの、なかなか接点がなく見学することができなかった岩見沢聖十字幼稚園で、この研究会が開かれるとのこと。
参加費は5,000円と結構な額ではありましたが、是非見てみたい。聞いてみたいとの思いで、当初のスケジュールを変更して参加してきました。
当日は午後1時より受付開始。
少し早めに行って、初めて園庭の様子を中から見させていただき、改めて理念を具現化した本物の雰囲気を感じさせていただきました。
これは山の頂上に地下水を組み上げる手動ポンプがあり、その水が小川を通って池に溜まる仕組みになっています。
画像の他にも既成の遊具とは異なる自然素材の遊び場が豊富にあります。
まさにプレーパークの理想であり、子ども達が本能で求める「キタナイアブナイウルサイ」ができる環境が整っていました。
ちなみに今回、聖十字幼稚園で開催された研究会には、宮崎県、奈良県、長野県等を始め、本州からも多数参加されており、スタッフも含めて約80名の参加とのこと。
この園庭がどの様にできてきたのか。またどの様な課題があるのか等を研究会の冒頭で園長先生がお話されていたので、ここで少しご紹介させていただきます。
菊地園長様の話によると、昨年50周年を契機に園庭に遊具をつくろうとなった。当初は幼稚園の園庭は公園にあるようなメーカー製の遊具を頼んで設置してもらうのが当たり前だと思っていた。
しかし職員の中に野育の会(以前、私も参加した第20回目の研究会の様子も御覧ください)に入っている人が二人いて、そのパンフレットを見せてくれたことがきっかけで東京の研究会へ一緒に行くことに。
そこでとても衝撃を受け、もっと深く知りたいと思った。
聖十字幼稚園は、もともと山や森に行っていて、地域の中ではワイルド系の部類。よって、先生たちも抵抗はなかった。
並行して遊具メーカーの研修も受けた。安全性、保証の金額など。その後、木村歩美先生(おおぞら教育研究所代表)の話を聞いた。自然遊び。リスクとハザードの違い。公園には基準がある。しかし自然遊びにハードルはない。
それら既成遊具と、手作り遊び場の両方の話を聞いて、先生たちと「どちらにする?」と聞いたら、全員一致で手作りを選んだ。
幼稚園としては自由遊びを沢山したい。
しかし、小学校に上がるときに40分間きちんと座れるようにしてほしい。自分の子供は考えずに動く、危ないのでは?などの保護者の声があり、これらをすべて全員で共有できるように、質問や意見に対する返答などを丁寧に行って理解をいただけた。そして保護者と共に現在の園庭を作ってきたとのこと。
〈参考例:園庭通信〉
【私感として】今回の研究会で見聞きしたことは、これまで自分自身が学んできたこととして、こちらでご紹介させていただいていることと相通じるものがあります(記載情報が幾分古くなり、自分の解釈としても修正したい部分も出てきていますが、根幹は同じなので、是非目を通して見てください。)。
またそれを具現化し、現在進行形で進化させてきていることに敬意を表さずにはいられません。
現代の時代背景を考慮すると、私の思いとして願わくば、”信州やま保育制度”の様に、岩見沢市内の幼稚園・保育園を様々な多様性を認めつつ、こども達の育ちを重視した自然保育への後押しをしていけるような「制度」をつくれたら良いのでは?と感じていることから、この聖十字幼稚園の市内先進実践例は何より心強く感じました。
【研究会の内容について】
菊地園長様の経過説明の後、『幼児期から学童期・思春期までの育ちを見据えて~学童期・思春期のこどもたちの姿から幼児期の育ちを考える~』と称して幼小中高の関係者が登壇し、ディスカッションが行われました。
そのやり取りの中から、いくつかのキーワード的抽出をさせていただきます。
これより先はあくまで備忘録的メモとなりますので、誤字脱字等を含め、文面も読みにくいものとなっておりますことをご了承ください。あくまでメモ書きですので、誤った情報もあるかもしれません。その際はどうかご容赦ください。
**登壇された幼小中高の関係者の発言を織り交ぜてメモ**
◇最近、子どもたちを触れ合う中で気になること。何もないところから楽しみを見いだせない。小学校のまわりも自然がたくさんある。しかし何もないところで遊びを見つけられない。時折、遊べる子がいるが、やはり家が自然環境にあったり、親がそういう遊びが得意な家庭など。明確に差がある。
◇今の子どもたちは優しくて温厚だが、孤独。スクールカーストも存在している。すごく孤独だが繋がりたい。合唱コンクールなどの練習だと、やり方が分かれば団結したがる。しかし自然にできない。それに拍車をかけるのがゲームやスマホ。生活に深く入り込んでいる。ゲームで繋がっている。一晩で状況が変わって翻弄される。大人が楽にしてやりたい。
◇失敗を恐れる。事前に聞く。子供は遊びの中で身につけていくべきことを、少年団や勉強させられている環境の中で身につかない。
◇聖十字幼稚園では、朝から外遊びに出ている。園庭が平地のときは子ども達は「先生何して遊ぶ?」と聞いてきていた。
「サッカーする?」などというと、それになる。先生と遊びたいという空気があり、主体性とか自主性の意図からはずれている。園庭ができて、禁止事項が減る。子供の自主性が高まる。教員の意識も変わった。
□禁止事項が多いときは、子どもたちは先生に怒られない遊びを小さな枠の中でしていた。
今は年齢関係なく、男女関係なく遊びを広げられている。「先生何して遊ぶ?」という言葉は皆無になった。これが主体性なのだと感じる。
何歳でどんな体験が必要か?数字を覚えるのも比重を覚えるのも、すべて自由遊びが関わる。あらためて遊びってすごいという認識になる。
◇子供の自主性を育むために、「がんばれ!」「やったね!」などと言わない。大人は煽らない。見守るのみ。
◇自己肯定感について、100人いれば100通りの選択がある。自分で選ぶ。選択肢がひとつしかないと、できない子は自己肯定感を育めない。
◇遊ばない子~疲れたぁ~つまんない
自由画→何を書いたら良いかわからないのでかけない。(テーマがあれば書ける)
◇園庭に森のラビリンスをつくったときに、遊びたい子が集中するのではないかと思ったら、地面族の子は地面で遊ぶ。(多様性・自主性)
◇前までは園庭に遊び道具を先生が出して遊びが始まり、片付けて終わる。しかし片付けられない。ちらかりがち。それは片付けたくなるシステムになっていないと言うことに気づいた。
◇「先生何して遊ぶ?」「先生一緒に遊ぼう」と遊びが始まると、盛り上がってそっと抜けようと思うと、抜けた途端に遊びが終わる。
◇聖十字幼稚園の園庭より、外の公園のほうが怖い。注意も増える。また「先生遊ぼう」の声が出てくる。園庭のほうが安心して楽しめるし、子どもたちは自由に楽しく遊んでいる。
■小学校との連携
◇生活経験が豊かであることが大事。小学校でなにか教えるときに新しいことを教えるよりは、既習の事象からアプローチできないか考える。家庭での生活経験が豊富な子。
◇水の量を比べるにも発想力がある。既習事項から物事を活かす。園庭を見ると、水が流れている。体験が生活にも繋がっていく。
◇幼稚園はなるべく遊ぶ時間をたくさん取りたい。小学校に上がった途端、遊び時間が急激に減る。そこは心配している。小学校のときに「あそこの幼稚園から来た子はなにもできない」と言われるのが怖い。幼児期に培ったベースの元、あと伸びで6年生以降急激に伸びても、それは出身幼稚園ではなくて小学校の手柄になってしまいがち。
◇園庭を変えると職員集団の意識が変わる。
◇社会的自立をもって生きる力を育む~命の底力
自由保育の誤解。朝連れてきて設定保育が始まるまでは自由保育という中では語弊ではないが、環境の無い中で自由にすれといわれても子どもたちは何もできない。整えられつつあるなかでの自由は自主性を育む環境。興味も何もない人の話を我慢して聞いていられる力があるか。どんな人の話も興味を持って聞くことができる力を育めるか。
◆第2部『挑戦も安心も大切にする園庭整備~踏み切るために・続けるために~』
進行:園庭改良~良いよね!でもどうする?ハードをつくるのは簡単。1年半を経過し、特に困っていること等、現場の先生の声を中心に聞いてみたい。
**実際に携わっている方々によるディスカッション抜粋**
□遊びの時間がとても大事。よって、園庭を改修し遊びの時間を増やしたい。しかし、バスの時間やカリキュラムに制約がある。時間配分からみんなで協議決定していった。
制作ものは市販品を使用するなど簡素化。行事も曲目を減らす。登山は年1回へ等々。運動会も極力練習の少ないものへ移行中。Etc.・・・遊びの時間を確保するために試行錯誤中の現在進行形。
□3月に修了式。保護者に来てもらって成長した姿を見てもらう。その中で来年はこのように変更していきたい。と告知をする。
□設定保育~横割り全員で一斉に行う必要はない。制作の成果品も年間を通して沢山ある子もいれば、ひとつもないこどももいる。選択させる。こどもたちに何が大事かを突き詰めていかなくてはならない。
□みんな違ってみんな良い とはいうものの、子供の環境にそれがなければ実現しない。
□異年齢が交じるとできない人がいるのが当たり前。同年齢だとできない子を蔑む傾向が発生する。
□毎朝、補助の先生3人で外に出る。まずは猫避けのネットを外す(預かり保育が終了後にかける)。井戸の誘い水を入れて準備をする。森のラビリンスの確認~上まで登ってボルトの緩みやトゲの有無を確認する。ハイジブランコ等、大きな遊具の点検。コース周辺に石がないか、子どもたちの片付け後の整頓。水撒き等々 8時半~8時45分ぐらい。
その間に他の3人の補助の先生が登園し6人になる。
テントたてを行って園庭使用OKの放送をかける。
雨天時は水たまりができるので、その水をかき出す仕事がある。
□冬は雪を満喫。ただし建物の中で遊んでも良いルール。室内の子が多い。ココアなどを振る舞えば外にでてくる。
□学生の時に学んだこと。自分が子育てしていたときと違う保育になる。「手を貸さない。褒めない、囃し立てない。」
□園庭遊び担当で会議を繰り返す。
□改善点を話し合う。当初は担任の先生任せだったが、最近は補助も積極的に関わる。木村歩美先生等が来た際にも積極的に研修をうける。
□こども~「先生○○しよう!」という場面が多かったが、今は外にでても何もすることがないほど。
□以前は泣いていて、手が離せない子も自ら遊んでいる姿を見て、この園庭の力を感じている。子供だけではなく先生サイドも成長させてくれる。
□縦割りの話~我が子は某幼稚園で横割りの園に通わせていたが、母親っこだったため、なれずに泣いた。縦割りのメリットは、年長さんが手を引いてくれて1週間もしないうちに慣れて泣かなくなる。
□市内の園庭はほとんど平面。園庭改修に際し、平面がどうして駄目かわからなかった。聖十字は昔から泥あそびなども積極的に行っていたので保護者の理解も早かった。
□一番不安だったのは怪我。園庭ができたときは子どものストーカーみたいな感じだった。しかし安全に遊べることがわかったら日向ぼっこしながら見ていれば良い。
□子どもたちは床がふかふかだと高いところから飛ぶ。硬ければ飛ばない。察知する。
□自分が不慣れなところは子ども達が出来たことに「すごい!」と言いがち。気をつけている。
□子供が変わったこと。
できるけど失敗を気にする子。ブランコに正面からは乗れるけど、横から乗りたい。考える。誰かの目を気にすることなく、自分との挑戦で得られる達成感。
雑駁なメモで申し訳ありません(本当は6千字ぐらいメモしたのですが、まとめきれずに一部抽出しての箇条書きでご容赦ください。)。
あらためて、この様な現場のお話を聞くことができ、その課題と解決に向けた取り組みの一端を知ることができました。
また、とても身近なところに真摯に取り組まれている環境があることを心強く感じます。今後も時折勉強させていただけるような機会に恵まれれば幸いです。
また、この研究会のことをfacebookに少しだけ紹介したところ、とても身近な人物が聖十字幼稚園のおやぢの会の元会長だったりと、なるほどなと思わせていただいたところでもあります。
次回、もし可能であれば実際にお子さんたちが遊んでいる環境や、冬の遊びなども見学させていただけないかと考えているところです。様々な見方もあるのかもしれませんが、この取り組みは本当に素晴らしい方向性だと感じています。