[①鳥栖市より続く]
総務常任委員会他都市調査の二日目は佐賀市の市民活動応援制度「チカラット」の現状と課題について調査をしてまいりました。
これは俗に言う「1%支援制度」と通じるもので、私自身、様々な市民活動等を継続してきた中で、最初に苦労するのがやはり活動資金等の財政面です。いくら高い志を掲げても、まずは資金集めにエネルギーが浪費されてしまい、結果として本来最も力を注がなければならないところが疎かになってしまうというジレンマに苛まれます。この市民活動応援制度には、そんな市民活動団体の課題を解決する大きなヒントがあるのではないかと期待して調査のお願いをさせていただきました。
ちなみに1%支援制度とは、地方自治体の市民が納税した税金のうち、市民が任意に選択し、その1%をその地域で活動する市民のためのボランティア団体やNPO等の活動資金として振り向ける制度。(wikipediaより抜粋)
元々はハンガリーでパーセント法として成立し、その後他国へも伝播。日本では2005年に市川市で採用され、現在いくかの自治体で実施されていて、この佐賀市でも平成23年から実施されています。
その背景として、、、
◆行政として、税収減、扶養費の増加等による財政悪化や人員配置等により、行政のサービスだけでは市民ニーズに十分こたえられなくなってきている。また、市民ニーズそのものが個別化・多様化しており、「公平・公正」を旨とする行政が提供する「均質的・画一的」なサービスでは、解決できにくい問題が発生している。
◆市民として、行政の提供するサービスだけでは課題解決に限界がある。また、生活環境の変化や少子高齢化の進展により、個人だけでは取り組めない課題が山積しており、より組織的な活動が必要になってきている → 多くの市民が、自分たちのまの課題を自分たちで解決しなければならないという意識は潜在的にあるのかもしれないが、実際の活動に結びついていない → その地に住む人が、まちづくりに積極的に関わろうとするきっかけや機会が不足している。
という様な課題がある。
更に市民活動団体の現状として、どうしても団体としての活動基盤が弱い。その要素として、財政基盤の脆弱性、人手・後継者の不足、情報発信力、認知度・共感度の不足があげられる。
(*これらは、自分たちが活動してきた「いわみざわ駅まる。」を始めとする様々な市民活動に共通の傾向であると認識をしています。)
上記課題に対応するにあたり、、、
◆市民自らが、自分たちの住んでいるまちの課題を、自分たちの問題であると捉え、さまざまな「まちづくり」に対する活動に参加していく必要がもとめられている。
◆行政では対応困難な、即時性、柔軟性、個別ニーズが求められる取り組みには、市民活動団体等、他の組織の力を借りる必要が出てきた。
そのことから。。
市民、市民活動団体、企業、行政など様々な主体が関わりながら、まちづくりを薦めていく必要性が増している。
そこで佐賀県では、平成23年より市民活動応援制度「チカラット」という取り組みを始めた。
まずはそのシステムについてwebサイトから抜粋します。
佐賀市市民活動応援制度「チカラット」は、平成23年度からスタートした事業です。
市民活動団体が行う公益的な事業の中から市民のみなさんが応援したいと思う事業を選んで市へ投票し、その投票数に応じて市民活動団体に支援金を交付する制度です。
佐賀市では、市民活動団体の活動基盤(資金面、人材面、情報発信力、説明責任力)を強化するとともに、市民の「市民活動」に対する関心を高めることで、市民活動やまちづくりへの参画と実践をすすめることを目的として、この佐賀市市民活動応援制度「チカラット」に取り組んでいます。
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ちなみに、どのような団体がエントリーしているかと言うと、下の画像をクリック拡大していただけると全体を見ることができます。
平成27年度で、「保健・医療・福祉分野」で7団体、「社会教育分野」で3団体、「まちづくり分野」で5団体、「観光振興分野」で2団体、「農山漁村・中山間地域振興分野」で1団体、「学術・文化・芸術・スポーツ分野」で9団体、「環境の保全分野」で1団体、「子どもの健全育成分野」で6団体、「情報化社会の発展分野」で1団体、「NPO支援分野」で1団体。合計36団体が応募しています。
(こちらからも支援対象事業を見る事ができます
http://www.tsunasaga.jp/plaza/chikaratto/project/)
◆支援を希望する団体は、必要書類を揃えて申請を行い、その後、外部審査委員会で事業内容を審査され、団体要件・事業要件に該当するか否かを決定し、無事対象事業として決定されると上記の様に市民からわかるように告知されます。
それに対し市民が投票することになります。
その方法、注意事項等は以下のQ&Aをご覧下さい(クリックで拡大する事が出来ます)。
ちなみにこの制度の概要としては、、、
市民1票あたりの支援額として、佐賀市の個人市民税に係わる1%=107,348,590円を18歳以上の市民の数=194,614人で割った551円となります(H27年度)。
今年度は36団体中、22団体が目標額に達し、交付決定されておりますが、この交付金は補助対象経費の2/3以内、上限30万円という縛りがあります。
そして投票率が約10%前後という事もあり、市民の関心としては残念ながらそれほど高い状況とは言えないと思われます。これは似たような支援制度を持つ他の自治体もほぼ似たような感じとのことです。
更に年代別投票状況としては上図の通り。
市民活動応援の制度としては、非常に魅力的なシステムです。
しかし、申請団体数が40に満たないことなどが気になり、申請手続きや報告書等の労力を質問したところ、やはり簡素化に努めているものの、交付金という性質上、それなりのものが必要とのことでした。更にその労力が担えずに申請をためらう団体があるかどうかという質問に対しても、その傾向はあるかもしれないとの返答。ただ、それをクリアしていく中で、自分たちの活動を的確に情報発信していくための技術も身に付き、しっかりとした説明責任能力を発揮することで、新たな共感者を得るというプロセスを期待している側面もありました。
そして、毎年申請しないで諦めてしまう団体の事情をお伺いすると、やはり市民の感心が必ずしも高いとは言えないため、各申請団体が知人等に呼びかけて投票行動を促している。その労力がまたまた大変ということで、どうしても諦めてしまう傾向もあるようです。
しかし、これらの課題をクリアしていけば、とても効果的な事業であることは間違いありません。
もしこれを岩見沢で実現するならば・・と個人的な視点で考えると、是非申請と報告書類等のハードルはもっと下げることを摸索してみたいと思います。なぜなら公的な活動であることさえ審査できれば、そこから先は市民のジャッジが入ります。もし説得力のない報告であれば、次年度は多くの市民にそっぽを向かれるということをシステムとして確立できれば、市民団体としてこんなに力強い支援もないかと思うわけです。
是非、これからの時代に即した市民活動の活発化を目指し、取り入れてみたい施策ですね。
【佐賀番外編】
実は佐賀市には2年前にも訪れたことがあります。
それは経済常任委員会の他都市調査において希望させていただいたもので、中心市街地に新たな人の流れをつくる「わいわいコンテナ」という取り組みについての視察でした。
(その時のブログhttps://hiranoyoshifumi.jp/2013/10/12/2097)
今回、このチカラットの調査を終え、若干の時間を取ることができたので2年前からの変化の様子を見たくて街に足を向けました。
わいわいコンテナの中には、平日の午後という条件にもかかわらず、結構沢山の人が集まっておりました。
何より、近郊に当時は無かった店舗が新たにできていることが良くわかりました。
疲弊する中心市街地において、このわいわいコンテナが核となり新たな人の流れができることで、次の投資が発生して再生へのステップに繋がっている様子が確認できました。
凄いことです。
更に足を進めると、2年前は空き地だったところにコワーキングスペースが出来ています。
これは㈱ワークヴィジョンズが自ら展開しているスペースで、更なる人の流れが期待されるものです。
実際、前まで来てみて、是非中に入ってみたかったのですが、今回行った時はcafeはお休みということで残念!
是非、中に入ってお話を聞いてみたいところでもありましたが、私も限られた時間だったこともあって断念。
またいずれ何らかの機会に訪れることがあれば、更に再生されて活気づく佐賀を見ることができるのではないかと期待感が膨らみます。
大変お忙しい中、丁寧に対応していただきました佐賀市役所の皆様に心より感謝を申し上げます。
(③古賀市につづく)
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