信州やまほいく〈総務常任委員会他都市調査②〉

〈平成29年10月5日投稿〉(①より続く

今回の視察の核となったのは、この長野県が進める「信州やまほいく」という制度でした。

この制度は、人の育ちに対する「幼児期の重要性」を、保護者、保育者、地域住民、行政など、子どもを取り巻く大人達が共有し、子どもの主体的な育ちと学びを大切にすることを目指してつくられています。

幼児期の育ちの重要性については、私自身、過去から様々な機会でお話をさせていただいたり、本サイトにおいてもまとめとして掲載していることもあり、この信州やまほいくの根底に流れるものと共通の想いがあります。(この制度は、想いだけではなく県内各地で実践していることが何より凄いことなのです)

この信州やまほいくのことを知るきっかけになったのは、この制度の中心人物である長野県県民文化部次世代サポート課次世代育成推進幹の竹内氏の講演を札幌で聞いたことに始まります。

今回はその時の気づきを、私個人だけではなく、岩見沢市の子育てや教育を所管する総務常任委員会のメンバーで共有したい。そして岩見沢での実現に向けて一歩を踏み出したい。その様な想いでお伺いさせていただいたものです。

よって、市の常任委員会の視察先としては珍しい県庁への依頼。そして午前に現場、午後から座学という1日がかりの視察となるなど、非常に力の入った調査となりました。

まずは現場で実際に活動されている「こどもの森幼稚園」でこども達が実際に遊んでいる姿を視察させていただき、その後、県庁にて座学となりましたが、本投稿では便宜上、順序をMIXして紹介させていただきます。

 

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まずはこの『信州型自然保育認定制度(信州やまほいく)』とは、自然保育の社会的認知、信頼性、質の向上を担保するため「自然保育」に取り組む団体を、選択できる2つの種別と24項目の基準で、長野県が独自に認定し、支援する仕組みです。

認定は、質、量共に自然保育に重点を置いている活動を行う「特化型」と、他のプログラムと併せて自然保育にも積極的な活動を行う「普及型」という2つの種別から選択することができます。

例えば今回視察させていただいた「学校法人 いいづな学園 『こどもの森幼稚園』」は徹底的に外遊びを重視する特化型となります。

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(↑偶然的に自然のブランコを発見して遊ぶ様子)

この幼稚園は55名の園児がいます。
飯綱高原という標高1千メートルぐらいの場所にあるのですが、長野中心市街から車で20分程度で通える好立地。前日の天気予報が雨だったため、外遊びのこども達を見ることができないのではないかと心配していたのですが、雨が降ってもこども達は大抵は外で遊んでいるとのこと。

また午前も午後も外で遊び、お弁当も外で食べることが多いとのこと。

よって、こども達の水筒も室内ではなく屋外に吊るされておりました。(↓)

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遊具等は最小限で、できるだけシンプルで工夫することが楽しい環境になっています。また50名を超えるこども達が自由に山の中でドロドロになって遊び回っているのですが、当然のことながら子ども達は気づかないものの、先生を始めとする大人たちが見守る器の中で自由に遊んでいる状況です。

 

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(↑)女の子がカエルを捕まえて見せてくれました。このカエルは敷地内に巣があるらしく、ちょくちょく出てきては子ども達に捕まっているとのこと。こども達には通称「神様」と呼ばれているカエル。(表情が豊かでとてもかわいらしい女の子だったのですが、掲載許可をもらってないので残念ながら下半分の表情でお許し下さい。とても自信たっぷりでカエルを見せに来てくれました。)

午後からの県庁庁舎内での座学では、竹内氏よりこれらのやまほいくが重要である視点として、「幼児期の育ちがいかに重要か」そしてその実現に向け「自然保育がどれほど適しているか」という事に関して、様々に説得力のある資料が提示されます。

 

 

●乳幼児期の脳の発達は著しい。そこで重要なのは”幼児期には様々なことを「教える」行為は控え、脳と体の自己増殖を育てる培地を作ることが大切。よって、幼児の発達への「過度な人為的介入」は避けるべき(河合雅雄〈子どもと自然〉岩波新書1990)

 

●思春期よりも前に取り組みたいこと

・教科学習よりも心の健康
・自信と現実感の得られる生活環境づくり
・合意の週間を通じた自律と社会性の育成
(信州大学医学部付属病院子どものこころ診療部〈自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体〉SB新書)

 

●子どもは自分が望んでいるいろいろなことを思い通りにしてもらうと、やがて満ち足りて、どんどんと自立していくものだ。満たされれば満たされるほど、むしろ自立は早くなる。/子どもの自主性や主体性はやりたいことの中でしか育たない。
(山梨日日新聞電子版〈ドクター本田のにじいろ子育て〉引用 2017年7月12日)

 

センス・オブ・ワンダーの一説

ジェームス・ジョセフ・ヘックマンの「幼児教育の経済学」”を元にした資料提示等々・・etc.

 

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『自然体験(自然環境の中で自然の素材や要素を活用して行う各種活動)』や『生活体験(世の中で暮らしていくための力」を体得しようという考えに基づいた「生活力や活きる力の習得」のために行う各種活動)』が豊かな子どもは自己肯定感が高い。

よって、子どもの自己肯定感を高めるためには自然体験や生活体験が不可欠である。

これらのことからも「自然保育」は幼児期の育ちに適しており、特に大切なのが「子どもの主体的な体験を意識し、日々の保育を再確認すること」である。

 

●この自然には2つの意味がある。

①自然の中の豊かな体験を大切にする保育
②自然な人間関係を保育に取り入れる保育

(子どもが安心できるよう、子どものありのままの育ちを受け止め、見守る)

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自然保育とは、豊かな自然環境や多様な地域資源を活用した屋外を中心とする様々な体験活動を、積極的に保育や幼児教育に取り入れいる活動で、恵まれた信州の環境を保育や幼児教育に活かしたいという想いがあります。

 

以下に制度としての特徴を記します。

●認定基準

①団体運営の安定性と透明性
②自然体験活動の計画性及び環境と時間の確保(特化型で屋外、週15時間以上/普及型で週5時間以上)
③保育及び自然体験活動の質の担保
④屋外での体験活動における安全管理
⑤地域との連携
⑥小学校との連携
⑦個人情報保護

という7領域24項目(普及型は22項目)という基準があります。

この時間基準に関しては、屋外限定ではない。また自然活動限定でもなく、生活体験や地域交流でも良い。また、やらせるのではなく、子どもの主体的な体験を保証。週や季節で増減可能。ということになります。

 

●認定制度の特徴と実績

・県内全ての園が参加できる制度(保育園、幼稚園、認可外保育施設等)
・すべての子どもを対象としたい。

現在、制度創立2年間で、全県域115園が認定~平成31年までに全県の1/3程度(約230園)の認定を目指す。

 

●2年間での認定園(115園)の内訳・公立保育園・幼稚園83/私立幼稚園・認定こども園23/認可外保育園9となり、そのうち普及型が106、特化型が9園となっています。

現在は公立園の統廃合で111園に減少、しかし平成29年度に41園が認定予定

 

●支援について

・各園保育者の自然保育研修交流会の開催(4回)
・各園に自然体験活動専門指導者を派遣(専門研修)
・自然保育ポータルサイトの開設
・県外への積極的な情報発信
・公的支援のない認定園への人件費助成
・森林環境税で活動フィールド整備 (検討中)

と、公立私立問わず積極的に支援を展開中(運営の安定化や専門人材の確保にむけて)

 

●自然保育を制度化した理由

①自然保育の信頼性と質を担保~保育の見える化により、客観性を高める。
②多様な保育・幼児教育の知識と経験を共有~団体が連携できるプラットフォームづくり
③自然保育の社会的認知・理解を推進~普及のための集中的な広報啓発

 

●信州型自然保育園認定制度の意義

・規制ではなく、求められる保育を保証
・義務ではなく、選択可能な制度
・画一的でなく、子どもや保育の多様性尊重

 

これらのコンセプトに基づく自然保育は、2018年以降の保育指針、幼稚園教育要領、学習指導要領と全く矛盾しないという裏付けがあります。

なお、前述「こどもの森幼稚園」の様な、子どもがほとんどの時間を屋外で過ごす「特化型」はまだ少なく、信州やまほいく認定円の9割以上は、公立保育園を中心とする「普及型」です。

こちらはこの度、園長先生と主任さんとご縁を頂き、色々とお話をさせていただいた「市立とがくし保育園」の様子です。

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移動途中に寄らせていただいたため、お昼寝の時間でこども達の姿を見ることはできませんでしたが、岩見沢にも良くある一般的な保育園の佇まいです。

こちらは信州やまほいくの普及型で認定を受けているので、前述の7領域22項目に則り、最低週5時間の自然保育が行われています。

とがくし保育園のwebサイトを見ると様々な活動事例が掲載されています。

川遊びなどは岩見沢では想像ができないスケールに見えますが、他の活動はどこの保育園でも参考にできそうなことばかり。週5時間の基準として、決して屋外限定ではない、自然活動限定ではないというのが園ごとの自由度を増し、様々な活動のスタイルを育んでいるのだとも想像できます。

必要なのはやはり設備ではなく、自然体験、生活体験を元にした「子どもの主体的な育ちと学びを大切にする」というマインドの醸成であり、それを実現するための制度ということに意義を感じるものです。

 

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岩見沢においては、まずは”人の育ちにおいて幼児期の重要性を広く共有すること”が大事。そしてそれを実現するために自己肯定感の醸成に繋がる「自然体験」「生活体験」ができる環境づくりを進めることが必要。

それを全ての岩見沢の子ども達が対象となるように、行政としては制度化を進めていかなくてはならないと感じています。

その実現、岩見沢型を目指す上で非常に参考になる先進事例がこの「信州やまほいく」である事は間違いありません。

 

是非、その実現を目指していきたいと思っています。

 

この度は長野県庁の竹内様、そして、こどもの森幼稚園のあっちゃん先生を始めとする職員の皆様、とがくし保育園のM園長、T主任と多くの皆様、大変貴重なお時間を割いて対応していただき、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 

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この度の視察は、この後に松本市に移動し、子どもの権利に関する条例を調査させていただき、無事に昨晩戻ってきたところです。

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非常にタイトなスケジュールでありましたが、有意義な視察となりましたことをご報告させていただきます。関係各位の心より感謝申し上げます。

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