〈2011年3月11日投稿〉
あの日から、もう15年目に入りました。
東日本大震災、そして福島第一原子力発電所事故によって、暮らし、地域、産業、価値観まで大きく揺さぶられたことを、私たちは簡単に忘れてはいけないのだと思います。あらためて、命を落とされた方々に哀悼の意を表するとともに、今なお様々な影響の中にある皆様に心よりお見舞い申し上げます。
私自身、原子力発電については、今でも単純に「絶対反対」とも「すぐ再稼働を」とも言い切れません。令和5年にこのテーマで投稿した時も、結論よりむしろ「迷い」を書きました。
放射性廃棄物の問題、事故時の被害の大きさ、後の廃炉や使用済み燃料の管理を含む莫大な費用を考えると、できれば原発に依存しない社会であってほしいのが本音です。しかし一方で、日本のエネルギー安全保障や、電力の安定供給、経済活動への影響も無視することはできません。
だからこそ、簡単な賛否ではなく、考え続けるしかないと思ってきました。
ただ、令和5年当時と比べて、社会の空気や国の政策は明らかに変わってきています。
2025年2月、政府は第7次エネルギー基本計画を閣議決定し、再生可能エネルギーと並んで原子力も活用していく姿勢をより明確にしました。そこでは、DXやGXの進展、データセンターや半導体工場などによって、今後の電力需要増が見込まれることも背景として示されています。
つまり、国としては「原発依存をなるべく減らす」と言うだけではなく、現実の電力需要を前に、必要な原子力は使う方向へ、かなりはっきり舵を切ったと言える状況です。
さらに、同じ計画では、次世代先進炉についても、廃炉が決まった原発を持つ事業者の敷地内で具体的に進める方針が示されています。これは、単に既存原発を延命するという話にとどまらず、日本が今後も原子力を一定程度維持していく前提で制度や産業基盤を組み直そうとしていることを意味します。
一方で、ここが極めて重要だと思うのですが、原発を使う方向へ社会が進んだからといって、原発が抱える根本問題は解決していません。
第7次エネルギー基本計画でも、使用済み燃料の再処理、原発の廃炉、高レベル放射性廃棄物の最終処分は、長期利用にとって重要課題だと明記されています。つまり国自身が、バックエンドの問題はまだ重く、未解決だと認めていると言って良いと思います。
私はこの点が、令和5年の時と同じく、あるいはそれ以上に大事だと思っています。
福島第一原発の廃炉作業も、少しずつ前へ進んではいます。
しかし、率直に言えば、核心部分はまだまだ「これから」です。
東京電力は現在、2号機で燃料デブリの試験的取り出しを進めており、2026年2月時点でも安全を最優先に準備と検証を重ねている段階だと説明しています。福島第一の廃炉工程は、事故直後の安定化、汚染水対策を経て、いよいよ「燃料デブリ取り出し」という本丸に入ったとされていますが、これは世界でも前例の乏しい極めて困難な作業です。
前進はしています。でも本格的な解決への道筋が見えたとまでは、まだ言えないのだと思います。
使用済み燃料プールからの燃料取り出しは、比較的進捗が見えやすい分野です。
4号機は2014年に完了、3号機も2021年に完了しています。2号機は2026年度第1四半期の取り出し開始に向け準備中で、5号機は2025年7月に取り出しを開始、6号機は2025年4月に共用プールへの移送を完了しています。1号機も今後の取り出しに向けた準備が進められています。こうした個別工程を見ると、確かに「何も進んでいない」わけではありません。
けれども、福島第一の廃炉全体が30年から40年規模の事業とされていることを考えると、やはり長い道のりの途中にあると見るべきでしょう。
また、令和5年の記事を書いた頃には始まっていなかったALPS処理水の海洋放出も、その後の大きな変化の一つです。2023年8月以降、放出は継続され、政府やIAEAは安全性確認を重ねています。ただし、技術的な評価と、社会的な信頼や納得は別問題です。数字や基準だけで割り切れない不安、国内外の受け止め、風評への懸念は今も続いています。ここにもまた、原子力を巡る問題の難しさがあります。
北海道のことを考えても、この問題は簡単ではありません。
泊原発の再稼働はなお実現していませんが、道内の電力供給や脱炭素、再エネ拡大、送電網の問題などを考えると、「原発か再エネか」という単純な二択では語れない時代になってきています。
再生可能エネルギーを増やすだけでも解決しない課題があり、だからといって原発の事故リスクや廃棄物問題が軽くなるわけでもない。その両方を直視しながら議論しなければならないのだと思います。
結局のところ、令和5年に私が感じていた迷いは、今も何ひとつ消えていません。
ただ、ひとつ明確に言えることは、日本社会が、未解決の課題を抱えたまま、それでも原子力を一定程度使う方向へ進み始めているということです。

だからこそ、私たちは以前にも増して、コスト、安全性、廃炉、最終処分、地域理解、そして将来世代への責任を、感情論だけでも、楽観論だけでもなく、丁寧に見つめなければならないのだと思います。
今もなお、「これが唯一の正解だ」とは言えるものはありません。
しかし、正解が簡単に出ないからこそ、忘れずに考え続けることだけは、やめてはいけないのだろうと信じています。3月11日という日は、そのことを静かに思い出させる日だと思っています。
〈参考資料〉
◇経済産業省エネルギー庁「第7次エネルギー基本計画(令和7年2月)」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/?utm_source=chatgpt.com
◇経済産業省 廃炉・汚染水・処理水対策ポータルサイト
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/?utm_source=chatgpt.com
◇TEPCO 燃料デブリ取り出し状況
https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/retrieval/?utm_source=chatgpt.com
◇日本原子力産業協会 原子力発電所の運転・建設状況
https://www.jaif.or.jp/data-japan/jp-npps-operation_status_je/?utm_source=chatgpt.com
◇経済産業省 「廃炉・汚染水・処理水対策の進捗と今後の取組」資料
http://https//www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/fukushimahyougikai/2024/30/shiryo_03.pdf?utm_source=chatgpt.com