未曾有の大災害、2011年3月11日から12年が過ぎたことを機に、原子力発電所を考えてみる。

《令和5年3月11日投稿》

今は2023年3月11日午後。東日本大震災が発生した時間を少しまわりました。
あの大災害において、命を落とされた方、遺族の方、そして帰宅困難等を含め、様々に被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

12年前のあの日は、今と同じ事務所でPCに向かって作業をしていたら、突然の揺れを感じて外に飛び出し、大きくゆっくりと左右に揺れる風景を眺めていました。その年は小雪の今年とは違い、まだ道路上に厚い氷があって、揺れと共にアスファルトと氷がずれて不思議な音が鳴っているのが印象的でした。

その後、福島第一原発の事故が発生し、大きな不安を感じたのを覚えています。

現在の私の原発に対する立ち位置としては、考えれば考えるほど知識も乏しく判断がつかなくなり、「絶対反対!」とか「一刻も早く再稼働を!!」という極端なものはありません。ただ、現時点で人間が処理できない放射性廃棄物を作り出すことはできれば避けたいと考えているのと、やはり事故が発生した際の多大なリスクを考慮すると、許されるなら原発はなくなっていってほしいという希望はありますが、エネルギーに乏しい日本において、エネルギー安全保障や経済性等を一切無視して、現時点で国内に54箇所存在する原発を今すぐに全部廃炉に!という強い思想もありません。

よって、「今後、どう考えていけば良いのか?」という自身の迷いの中で、今日という日を迎えたことで、少し情報を整理し、拙稿をご覧になっていただけた稀有な方々と一緒に考えてみたいと思います。先に申し上げますが最後まで読んでいただいても結論はありません。なぜならリスク面には不確定要素が多く、明確な正解は無いと思うからです。

あくまで共に考えるきっかけになれば幸いです。

(私自身、当たり前ですが専門的な知識は到底持ち合わせていなく、本やwebで得られる情報を基にしていることをご了承ください。)


昨日、NHKの原発特設サイトで、「検証 原発事故」がアップされていました。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/nuclear-power-plant_fukushima/feature/article/article_12.html

そこでは、[原発事故12年 各号機の現状「燃料デブリ」取出しへ重要局面]という見出しで以下のようなことが記載されています。

[要約]
■廃炉 計画に遅れ

本来2023年3月時点では「燃料デブリ」の取出しが開始されている想定だったが、まだ始まっていなく、計画より遅れている。

■「燃料デブリ」推定880トン
廃炉作業における最大の難関。放射線が強く人間は近づけず、調査用のロボットも事故後の構造物で行く手を阻まれ、調査の段階から難航中。2022年からイギリスで開発されたロボットアームで試験的な取出しに着手予定が、改良や見直しが必要で遅れ中。

などなど、非常に難航していることがわかります。


またそれにかかる費用(廃炉、被災者への損害賠償、除染等々)も莫大で、1年ほど前の報道では政府が2016年に示した見込額21.5兆円の内、すでに13兆円がかかってしまっている状況で、本日の日経新聞記事によると、費用は年1兆円を要していること、事故から12年目を迎えるが廃炉や除染の道筋は見通せなく、昨年末までの累計で4兆円を超えた”除染費用”は、今後更に兆単位で増える可能性あり。

”賠償費用”も昨年12月、国の賠償基準の見直しが決まり、東電は新たに5000億円規模を支出する予定。冒頭にある”燃料デブリの取出し”も回収に6兆円、廃炉全体に8兆円との費用試算を2016年に行っているが、前述のとおり、更に増える見込み。

政府は13兆5000億円の国債発行枠を確保している。また政府も出資する原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じ、約10兆円を東電に交付。賠償費用などに充てている。これらは全国の電気代や託送料、復興特別税などから国債の償還財源を捻出するとのこと。今後の事故処理や最終的な形は示されておらず、費用総額は見えない状況


(2023年3月11日 日本経済新聞より抜粋)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA078HY0X00C23A3000000/

これらを考慮すると、現時点で途方もない額がかかっていること。また今後、更に多額の費用を要することがわかります。


 

さて、近頃の電気代の高騰もあり、一般家庭の電気代は原発が動けば安くなると再稼働を望む声が高まっています。これが良いのかどうか、明確に言い切ることは今の私の知識ではできません。

ただ、震災のちょうど1年前の2010年3月11日に発行された、大島堅一著「再生可能エネルギーの政治経済学~エネルギー政策のグリーン改革に向けて~(東洋経済新聞社)」を見てみると・・。

やはり様々な疑問が浮かびます(とは言え、非常に難解な本ゆえ、要点のみ流し読みレベルであることをご了承ください)。

■日本は1970年以降、チェルノブイリや国内事故の影響等で原発の立地が滞るようになる1990年代半ばまでに、平均すると年1.5基のペースで原発を開発し、54基の原発が設置された。(現在は6発電所10基が稼働中、東日本大震災後に廃炉が決定したのは21基

■日本はエネルギーを海外に頼る上で、エネルギー安全保障を確保しなければならない。石油依存を下げ、エネルギー供給を安定して確保するには原発が最適と判断。電源三法により電源開発促進税が電源開発の財源になるシステムが作られ、現在も維持されている。

そこで、原子力発電は本当に安いのか?という本質を行くと・・

■原子力発電の総費用に関する考え方

①発電に直接要する費用(燃料費、原価償却費、保守費用等)
②バックエンド費用
 ・使用済み燃料再処理費用
 ・放射性廃棄物処分費用
 ・廃炉費用
③国家からの資金投入(開発費用、立地費用)
④事故に伴う被害と被害補償費用

が総費用とと算定される。

他にも様々な条件があるものの、ざっくりまとめに行くと、想定されているバックエンド費用や、事故等に関するリスクや環境費用(当著書は震災前のものなの)が過小評価されていることを指摘している上で、原子力発電が最も安い電源であるとは到底言えず、むしろ、社会的には最も高い電源であると結論づけられています。

前述の福島第一原発の事故処理に向けた経費増加状況を見ると、その傾向は更に高まることと想像します。よって個人的には現在の状況で原発が再稼働すれば、電気代が安くなるというロジックは若干恣意的なものを感じ、懐疑的でもあります。

したがって、この高い費用と輸入に頼るエネルギー安全保障をどう天秤にかけるか。また、事故が一切起きないという大前提が本当に正しいのか?ということを思考要素に加えなくてはならないのだと思っています。


話は変わって。

2018年9月に公開された「北海道の電力供給体制の今後と泊原発」というweb記事がありました。
https://www.gepr.org/contents/20180910-01/

この中で、北電供給分の種別ごとのシェアが詳細に記載されていましたので、必要な部分のみ抜粋してみます。

種別2009~2010年平均シェア2016~2017年平均シェア
水力10.40% 11.27% 
火力37.84% 65.83% 
原子力39.16% 0.00% 
新エネ0.30% 0.45% 
他者受電・融通10.78% 14.31% 
 揚水用 -0.43%-0.69% 
 合計98.06% (36,563百万kwh)91.86% (31,597百万kwh)
https://www.gepr.org/contents/20180910-01/(参考サイト)

この時点(2018年)での北海道の発電としては、従来の火力発電所が設備利用率を大幅に上げて酷使されている状況で、今後は太陽光や風力発電に代替されていくこととなる。しかし、これらは電力需要に合わせて発電を調整できないため、電力が必要無いときには余る、本当に必要な時に発電量が不足する可能性など、電力の脆弱性を高める要因になりうる。

よって調整電源としては、LNG火力発電所の増設ということになるが、小売事業者に非化石電源比率44%以上を義務付けるパリ協定に基づくCO2規制もあり、元来の火力発電所の稼働率は落ちざるを得なく、全体の採算性は落ちていく。となると、益々電気代は高騰することに繋がっていくことが予想されます。

また気候変動に対する考え方も要素になります。

結果として、簡単に答えを導き出すことはできませんが、短絡的に「一刻もはやく原発再稼働!」「原発反対!」と○か☓かで割り切れる状況はすでに超えてしまっていて、私たちはかなりグレーな状況を運を頼りに揺れ動きながら判断していかなくてはならない時代になっているのかもしれません。

ただ可能であれば、廃炉が決まった21基(福島第一原発を含めると24基)の実行を一刻もはやくということになります。とは言え、これも気の遠くなる時間がかかり、最も早い浜岡原発で2036年。伊方原発では2056年までかかるということになるそうです。

(出展)https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/shared/img/qv52-2ffgplqs.png

この廃炉にも莫大な費用がかかってしまうこと。また、今後増え続ける社会保障費等の国民負担率(対国民所得比)を考慮すると、私達一人ひとりの懐具合は益々厳しいものになってくるのが必然と言えます。

https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10297455/www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/basic_data/201402/sy2602n.pdf

こんな国民負担率(租税負担率と社会保障負担率の合計)で給料の約半分を失う状況。対し、私が生まれた昭和45年では24.3%でした。日本はいよいよ難しい時代に突入してきました。「これは国のせい?」いやいや、国の舵取りをしている国会議員を選んでいるのは私達国民なんですよね・・・。


最後に、今話題のAIである”chatGPT”に聞いてみたところ、このような回答になりました。

いわゆるAIなので、その答えは完璧に正解を導き出してくれるようなものではありませんが、概ね世間一般の常識というか、一定の見識をもつ集合知的な答えと感じるところです。

しかしながら、気がつけばAIもここまで進化してきました。

雪発電の実証実験(リンク先5,(2)参照)等もあり、様々に新しい技術が世の中を変えてくれるのかもしれません。ただこれではあまりに他力本願なのかもしれません。

いずれにせよ、私達は考え続けていかなくてはならないのだろうと思っています。


 

徒然に脈絡も曖昧に記載してしまいました。

東日本大震災から丸12年が経過し、南海トラフの大地震等も可能性が高まる中、様々な懸念が募りますが、重ね重ね、私達は考えることをやめてしまってはいけないのでしょうね。

常に答えはなく、とても難しいことですが。

 

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