〈令和8年3月9日投稿〉
本日10時から総務常任委員会と経済建設常任委員会の議案審査及び所管事務調査が行われ、私は控室のスピーカーで傍聴していましたので、気になった「緊急銃猟」について共有したいと思います。
緊急銃猟制度の開始と、その実効性を左右する課題について
近年、全国各地でクマ類の市街地出没が相次いでおり、住民生活に大きな不安をもたらしています。岩見沢市においても、今後、住宅地周辺や人の日常生活圏にヒグマが出没した場合に、どのように住民の安全を守るのかは、極めて重要な課題です。

こうした中、鳥獣保護管理法の改正により、令和7年9月1日から「緊急銃猟制度」が実施できるようになりました。
これは、市町村長が必要と判断し、かつ住民の安全確保のための措置を十分に講じた場合には、これまで原則として認められてこなかった「人の日常生活圏における銃器によるクマ等の捕獲」を可能とする制度です。
この制度の背景には、これまでの現場対応における大きな制約がありました。
従来、住居が集合している地域や多数の人が集まる場所では、銃器による捕獲は原則として禁止されており、例外的に認められるのは、警察官職務執行法や刑法上の緊急避難に該当するような、現実かつ具体的で、特に急を要する危険が生じている場合に限られていました。
そのため、危険な個体が市街地に現れていても、まだ直ちに人身被害が生じていない段階では、銃器による対応がとれず、現場が膠着状態に陥るケースがありました。今回の制度改正は、こうした状況に対し、市町村長の判断のもとで、より迅速な対応を可能にしようとするものです。
もっとも、これは単純に「住宅街でも撃てるようになる」という話ではありません。
緊急銃猟を実施するためには、法律上、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。
- クマ等が人の日常生活圏に侵入している、または侵入するおそれが大きいこと
- 人への危害を防止するため、緊急措置が必要であること
- 銃猟以外の方法では捕獲等が困難であること
- 銃猟によって人の生命または身体に危害が及ぶおそれがないこと
特に4番目、つまり安全が確保できない状況では、制度上も発砲はできません。
実際の運用にあたっては、国が示すチェックリスト等を用いながら、通行規制、住民避難、安全な射角の確保、バックストップの有無などを現場で確認し、条件を欠く場合には緊急銃猟は行わないことになります。

制度ができたとしても、現場判断は極めて慎重にならざるを得ません。
さらに、制度の実効性という点で、もう一つ大きな課題があります。
それが、対応できる人材の確保です。
委員会資料でも示されている通り、本市においてヒグマ捕獲に対応できるハンターは4名にとどまるとのことです。緊急銃猟では、発砲者だけでなく、ヒグマの動向を監視する者、周囲の安全を確保する者など、複数人による体制が必要になります。加えて、万一の場合に備えたバックアップも考えれば、実際には相当限られた人員で制度を回していかなければならないのが実情です。
仮に環境省や北海道の人材データバンクを通じて外部の協力を得る仕組みがあったとしても、緊急時に即応できるかどうかは別の問題です。結果として、必要な人員が確保できなければ、従来どおり警察や市の車両等による住民の安全確保と追い払いに徹するほかない場面も想定されます。
制度が始まっても、それだけで直ちに万全の対応が可能になるわけではありません。
こうした状況を踏まえ、人材育成の観点から注目されているのが、春期管理捕獲、いわゆる春グマ駆除の活用です。
現在は、ヒグマ対応の経験を積む場が限られており、とりわけ市街地対応を意識した銃器捕獲の経験を重ねる機会は多くありません。そのため、春の山林での管理捕獲を通じて、熟練者が若手に同行し、実地で技術や判断を伝えていくことが、今後の担い手育成につながるのではないかという考え方です。
令和8年以降の実施に向けて、猟友会等との調整が進められているとの説明もありました。
また、市民感覚としては「目の前にクマがいるなら撃てばよいのではないか」と思うかもしれませんが、実際にはそう単純ではありません。資料では、ヒグマが常に動き回っている状況や、住宅が密集している場所では、緊急銃猟の実施は困難、あるいは要件を満たさない場合があるとされています。
これは、弾丸の貫通や跳弾の危険があるためです。
確実に弾を受け止める地形や安全な射線が確保できない場合、あるいは個体が動き続けていて狙点が安定しない場合には、周辺住民や建物に被害を及ぼすリスクを排除できません。つまり、制度があっても、安全確認が十分にできなければ発砲はできないということです。
このように見ていくと、緊急銃猟制度は、確かに大きな制度改正ではありますが、その実効性は法改正だけで担保されるものではありません。現場で判断し、対応できる人材がいて初めて機能する制度であり、そこに大きな課題が残されています。
行政としては、マニュアル整備だけでなく、警察や猟友会との連携、机上訓練や実地訓練の積み重ね、そして担い手確保に向けた取り組みを着実に進めていく必要があります。同時に、地域としても、こうした危険な現場を担う人材をどう支えていくのかを考えなければなりません。
制度ができたこと自体は前進です。
しかし、本当に問われるのは、いざという時にその制度を現場で動かせるのかどうかにかかってきます。私は、制度の運用を支える体制づくりまで含めて、引き続き注視していく必要があると考えています。
更には、緊急銃猟のみならず、軽井沢等で実績のあるベアドッグや、山北町などで行われている広葉樹の植樹をとおし、熊を里から奥山に返す取り組みなども注視していけたらと思っています。

■令和7年第2回定例会で法律の改正に伴い、いち早く準備を促す一般質問を行っています。