平成28年度 岩見沢市議会 市民クラブ他都市調査(1)NPO法人 富山・イタズラ村・子ども遊ばせ隊

〈平成28年12月21日投稿〉

平成28年11月9日~11日の3日間、所属会派である市民クラブで他都市調査に行ってきました。

その内容を個人的な視点からご報告させていただきます。

《11月9日:1日目》

早朝5時半に自宅を出発。

富山に行くには都合の良い時間帯で直通便がなく貴重な1日を大きく失ってしまうのです。そこで羽田乗り換えで7:30千歳発の便としたのですが、実際にはそのもう一本後ろの便でも間に合うもの・・。しかし、この早朝便であれば一人約1万円程度航空運賃が安くなるという事を聞き、行政のチェック機関の役割を担うものとして経費削減はまずは自ら!との思いもあり、会派一致で早起きをすることに。。

飛行機は無事に到着し、そこからレンタカーを借りて富山市へ。

向かうはNPO法人 富山・イタズラ村・子ども遊ばせ隊です。

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なぜこのNPO法人を視察先に選定させていただいたのか。

それは現在の子どもたちを取り巻く遊び環境の悪化にあります。その悪化する遊び環境に対し、大人が如何に真摯に活動を展開していくかという視点において、非常に優れた視点と継続的な活動。また非常に悲しい出来事を乗り越えて今に至っているリアルな背景がありました。

このNPO法人を知ることとなったきっかけは、今年の4月にプライベートで参加した「こども環境学会全国大会・富山大会」の学会誌に掲載されていたものです。その時はスケジュールが合わずに参加ができなかったのですが、是非この度、志を同じくする会派のメンバーで調査に行きたいと考えたものです。

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理事長の早川隆志氏は、子どもにとって生きる力の源である「遊び」が子どもたちの暮らしから消えつつある中、子どもたちの遊びを取り戻すため、2004年に教員を早期退職し「富山・イタズラ村・子ども遊ばせ隊」を創設しました。

これまでの12年間の活動から見えてきたのは、子どもに関わる全ての大人(親、保育士、教師、カウンセラー等々)が”子どもの味方”となり、「遊びはすごく楽しい」と伝える必要があるということ。

”子どもの味方”になるとは「子どもの生きる力は、体を動かして遊ぶことから生まれる」という理解を持ち、大人自身も子どもと遊ぶ力や技を身につけること。また、子どもがもともと持っている遊ぶ力を、大人が抑圧してしまっているのが問題だと気づかなくてはならない。

本講義の中で、その要素を知るきっかけとして二つの遊びが提示されました。

一つはさり気なくテーブルの上に一人ひとつずつ置かれた「サソリの標本」です。

一見おなじみのおもちゃですが、これが見事に引っかかります。

お話を聞きながら何気なくこのサソリの標本を手にした人がつい外包を開いてしまうと、中で巻かれていた輪ゴムが開放され、大きな音と共に振動が伝わり、まるで袋の中で本物のサソリが動いたような感覚に陥るおもちゃです。

当然、当会派でも「あっ!」と声を上げて驚いてしまった人もいるぐらいで、その後に会場は大爆笑となります。

この笑いと、このイタズラに引っかかったら次に誰に仕掛けてやろうか!という感覚が遊びの拡がりとコミュニケーションになります。

確かに私自身、このサソリの標本を、家に帰ったら真っ先に子どもたちに仕掛けてやろうと思いましたし、子どもたち自身も、できれば学校に持っていって誰かを驚かしてやりたいと思ったそう。これは紛れもなくあそびの連鎖と拡張でコミュニケーションを高めていくことができる、イタズラの奥の深いところなのだろうと再認識しました。

また、ワークショップのメインとなる皿回しがまた凄い。

NPOイタズラ村さんも、我々会派の9名と対になれる人数でお迎えしてくれていましたので、二人一組で皿回しのレクチャーとなります。

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ぱっとすぐに出来てしまう人が入れば、やはりなかなか出来ない人もいて、会場内は大盛り上がります。

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《この過程で出てくる大人の心の動きとして》

①ばかばかしさとのめり込みのギャップが醸し出す心理的効果

②のめり込みから生まれる「子ども力」(ムキになる=熱中、回らなくて悔しい、回った時の達成感や優越感などの感情)

③一緒に遊ぶもの同士に生まれる「共感」(心身の響き合い・コミュニケーション)

④子ども時代の蘇り(遊び仲間や家族への感謝)

⑤今の自分を見つめる中で生まれる新しい物語づくり(関係性の変化、生き方の変化)

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があると感じます。

単なる皿まわしではなく、「遊び」から得られる様々な要素の重要性を認識するに至るのです。

決して昔の遊びや道具を万能として祀り上げるものではありませんが、このシンプルな遊びの中に、上記⑤つの感情が沸き起こることから、今の子どもたちにとっても、バーチャルな環境に浸かるのではなく、友達同士や大人とワイワイと挑戦する環境が重要なことに気づきます。

そしてそれを退けているのは、子どもたち自身ではなく、大人だということにも気づかされれてしまうのです。

 

とは言え、今更なんで皿回し?という疑問を抱かれる人は多いと想像します。

そこで頂いた資料の中から下図を掲載します。

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棒を手に持つ→手を揺らす→身体全体も揺れる→皿が落ちる(悔しい)→皿を拾う(もう一回!)→再び挑戦(・・繰り返し)→皿が回る(笑う→胸が弾む=嬉しい・自信)→「視てみて」と周囲に知らせる(心身が踊る=共感・コミュニケーション)→廻りの人々が反応する(拍手や褒めることば→自尊感情・愛着感情)

という様に、「遊ぶ」という行為を通して、悔しい思い→繰り返し挑戦する意思→嬉しい・自信→周囲との共感・コミュニケーション→互いに褒める・自尊感情・愛着感情が育まれるというサイクルが見事に表現されているのです。

これは人間性を育むためにとても大事なステップであり、普通は当たり前に「遊び」の中で繰り返し経験していくものであると思いますが、現在はインターネットでの一方的な情報の授受&時間の浪費、ゲームでのバーチャルな感情起伏等々に遊びが変わってしまっていることから、上記のような自然なサイクルが生まれにくい環境にあると感じています。

インターネットやゲームにおいては、その中でのコミュニケーションが寧ろ社会性を育むかのような記述もありますが、果たして本当にそうなのだろうか・・と疑問を感じずにはいられません。この事についてはいずれ考察してみたいと思っています。

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他にも会員の方々がどのような活動を展開しているかのお話もありました。子どもたちと真っ当に向き合っていく様は本当に素晴らしく、志のある方々が集うNPOであることが良く理解できました。

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ここで配布された資料から早川隆志理事長の文章を抜粋して紹介させていただきたく思います。

(前略)

私は20年前に皿回しに出会った。大阪の大道芸人さんに教わった。皿は案外簡単に回った。仲間に試した。「回ったー」と飛び跳ねて喜んだ人がいた。また一方で「できない!」と悔しがった人もいた。その時「皿回しは大道芸人さんが見せて人を喜ばせるだけの道具ではなく、多くの子どもも大人も自分でやって楽しめる遊びに使いたい!」と思った。職場である「養護学校」の子どもたちと遊んだ。大学の授業で使ってみた。子どもたちが元気になった。大学生も「人生観が変わった」などと反響があった。

今から11年前に子育て支援を使命とするNPO法人を作った。その旗印は「皿を回して子どもも大人も元気になろう!」である。自信はあったが、「皿回し」を軸にした子育て支援という「メッセージ」には、「恥ずかしい」という気持ちがあった。

しかし、思い切って歩み始めた。子育て支援のための「講演依頼」は全国からあった。宝塚市・明石市・仙台市・・・。皿を持って講演に出かけた。講演前には「なんで講演会なのに、おもちゃの皿が積まれているの?」という雰囲気(冷笑)を感じたこともあった。

(中略)

講演が終わると聴衆のみなさんに感想を書いてもらう。すると必ずといっていいほど、「講演会になんで皿回しなどしなくてはいけないの?」と私への「拒否」感覚を書いている。ある大学では「講義室に入って席につくと、いきなり前の机に皿らしきものと棒が大量においてあったので、正直もう帰りたくなりました。そんな気持ちでいると、やっぱり皿回しをすることになって、「うわー」と思ってしまい・・・」と学生たちが露骨にレポートに書いていた。(最終的に受講者は皿回しの面白さや凄さに気づくのだが。講演の最初に抱いた感情とワークショップをした後の実感との「ギャップ」があるからこそ皿回しの「凄さ」の真価がわかるのである。)

(後略)

まさしく私たちも同様です。

どうして活動の視察に来て「皿回し?」という感覚を抱いた人が大半だったと思います。しかしその単純な「皿回し」を通し、今の私たちが子どもたちのためにやるべきことが見えてくるような気がするのです。これは「形式知」的に言葉を聞いただけ、文字を読んだだけではわからない、これぞ「暗黙知」の真価でありました。

その皿回しがどれぐらい凄いものかと言うと、今回、我々会派全員に1組ずついただく事ができました。その持ち運びしにくい皿回しセットを、全員が全員大切に壊れないよう、無くさないように慎重に持ち帰り、家に帰ったら家族や孫たちとやってみたい!と思わせるだけの理由がありました。

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これが遊びの力であり、大人も誰しもが持っているはずの「子ども力」を引き出すツールでありました。(もちろん、私も帰宅して真っ先に子どもたちに披露し、家族全員で大笑いした遊びました)

視察の2時間はあっという間に過ぎ去り、最後に大坂副会長より御礼のご挨拶をさせていただき、NPO法人富山・イタズラ村・子ども遊ばせ隊への視察は終了いたしました。

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この先、氷見市へと車を走らせるのですが、道中はこの話題と遊び全般の話題で持ちきりでした。それほどのインパクトのある早川理事長のお話でした。

大変お忙しい中、この様に大勢の会員の方々で私たちを受け入れていただき、尚且つ非常に丁寧で的を射たレクチャーをしていただき、心より感謝申し上げます。

この子どもたちを取り巻く社会環境の改善に向け、私達議員もしっかりとアプローチをしていくことをお約束させていただきます。

 

平成28年度 岩見沢市議会 市民クラブ他都市調査(2)氷見市役所へ

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